ためらわない,迷わない

仕事を辞めた。そして自由人になった・・・。

マウントを取る?!

ある日、私は娘夫婦を迎えに駅に向かった。


※写真はブログの内容と無関係です。


改札口に着くと、ネクタイとスーツ姿のサラリーマン風の若者たちが顎をしゃくる。


「なんだよ、最近よく見かけるな」
「あの爺か、ボケちまったんじゃね? ああはなりたくないな」
そんな会話が聞こえてきた。


若者が顎をしゃくった方向を見ると、髪の毛はボーボー、髭は伸びきっていて、顔は日に焼けて黒く、深いしわが刻まれた労務者風の老人が立っていた。


泥に汚れた作業服と長靴姿、股間には失禁と思われる染みもあり、行きかう人々もその老人を避けて通っていた。


通勤時間帯なので、若者たちは小走りにホームに吸い込まれていった。
その老人は相変わらず行きかう人々の流れを見ている。


そこにもう一人の老人が現われた。
「おうっ」と言ってアルミホイルに包まれたひとつのにぎり飯を差し出す。


「何見てんだ?」
「あいつら会社に着いたら上司にペコペコ、お客にペコペコ、言いたいことも言えねえんだろうなぁ」
「サラリーマンは大変だよ」
「ところであれ(土地)は売ることにしたんか」
「しょうがねぇ、息子は農家を継ぐ気ねーしな」
「だいぶ(税金で)もってかれっぺ」
「半分以上もってかれた。それでも億は残ったかな」
「後々、子どもらの喧嘩の種(相続財産)がなくなったと思えばいいんでね」
「だよな、そう思うしかねーよな」



自分たちが社会を動かしていると自負する若いサラリーマンたちが労務者風の老人を蔑む。
一方で、サラリーマンの悲哀を憐れむ高齢土地所有者がいる。


最近「マウントを取る」という言葉を知った。
人というものは相手を下に見て、自分を優位に思うことで安堵する動物なのかも知れない。


そうこう考えている内に娘夫婦が到着した。
彼らを笑顔で迎え、車に乗り込む。


私は先ほど改札口で見た話をしようかと思ったが止めておいた。

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