ためらわない,迷わない

仕事を辞めた。そして自由人になった・・・。

旅で出会った人たち⑦

稚内空港から羽田空港への帰りに


稚内空港は海岸線に沿った滑走路が1本のローカル空港


この路線は比較的利用者が少ないため、通常は稚内⇒新千歳⇒羽田のように、新千歳空港で乗り換えるのだが、夏のピークシーズンになると直行便が運航される。


私が乗ったANA572便は、A席(窓側)、B席、C席、通路、D席、E席、F席(窓側)という配列だった。


妻はD席、私はE席で、F席は空席かと思っていたら、ドアが閉まる直前に黒いビジネススーツを着た若い女性が慌てて乗り込んできた。


私はちょっと"ラッキー!"と思ったが、隣に妻がいるので鼻の下を伸ばさないように気をつけていた。


彼女は、まるでサンタクロースが持つような白くて大きな袋を膝の上に置いていた。


他の乗客は荷物を棚の上に乗せ、各自のシートに座りくつろいでいた頃になっても、彼女は何もする様子は無かった。


まもなくプッシュバックが始まってしまう。


私は妻を通路に立たせ、私も立ち、天井の棚を空けた。
他の荷物を寄せればまだ荷物を入れるスペースはある。


私は彼女に「貴重品は足元に置いて、その大きな荷物は上の棚に乗せましょう!」といい、荷物を渡すよう促した。


すると・・・


「いえ、結構です!」拒否されてしまった。


困ったなぁ・・・。


本当は「エマージェンシーの時にそんな大きな荷物を膝の上に置いてたら、脱出出来なくなるよ!」
と言いたいのだが、乗客の中には飛行機恐怖症の人もいるから、ネガティヴな話題は厳禁だ。


私は疲れ気味の頭をフル回転させて言葉を選んだ。


「でも、羽田まで2時間掛るから、その体勢で座り続けるのは大変だよ」と言って手を差し伸べたら、その大きな荷物の中からスマホと充電ケーブルを取り出して、残りを私に渡した。


私は荷物を棚に乗せ、蓋がカチッとロックするのを確認して席に座った。


すると私の後ろから声が掛かった。
「ありがとうございます!」
CAが笑顔で私にお礼をいった。


その直後にドアはクローズしてプッシュバックが始まった。

稚内空港には平行誘導路が無いため、飛行機は一旦滑走路の端まで行って、Uターンしてから離陸する。
(まるでラジコン飛行場みたい)


私は、いったいこの女性はどんな子なんだろうと考えていた。


私が荷物を渡すように言ったことに不快感を感じたんだろうか。
その割には「利尻島が見えますよ!」などと話し掛けてきたので、どうやら悪い印象を与えてしまった訳ではなさそうだ。


それとも単に遠慮していたのか。
でも、飛行機の安全運航規程上、膝の上に大きな荷物を置いておく訳にもいかない。
それくらいのことは知っていると思うのだが???


まぁ悪い子じゃないと思うけど、いわゆる"令和の不思議ちゃん!”遭遇したのかも知れない。


スティーブン・スピルバーグ監督 映画「未知との遭遇」より

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