ためらわない,迷わない

仕事を辞めた。そして自由人になった・・・。

これが格差社会ということか②

迷い人

我が家は週に一度食料品と日用品を買いに大型スーパーに行く。


車を駐車場に停め、いざ店内にはいろうとした時、カートの列を押している人を見かけた。


見た目は後期高齢者が、おそらく10台以上、全長にして5mくらい重ねたカートを

まるで列車の様に押していた。

                            ※写真はイメージです。


少なくとも、写真の倍の長さはあった。


胸には「研修中」と書かれた交通安全帯を付けている。


真夏の日中は35度を越える。その姿には声もなく、顎からは汗が滴っていた。


立っているだけでもクラクラしそうな熱気の中、さらには駐車場のアスファルトの照り返しを浴びて、極悪な環境の中での仕事だ。


毎週見ているが、毎回人が変わっている・・・続かないのだ


私が「必要な仕事なんだろうけど、俺には出来ないな」というと


「出来ないよ。倒れちゃうよ!」と妻が返してきた。


せめて協力できることは、カートを所定の場所に整然と置くくらいのことだ。



思い出したので、もう一つ。


今度は真冬の北風が吹きさすぶ日。


私は18Lのポリタンクを3缶持って灯油を買いに行った。


混んでいたので列に並んで自分の番をじっと待つ。


その間、冷たい風が肌を突き刺した。


ポリタンクに灯油を入れる作業員は、やはり後期高齢者だった。

                        ※写真はイメージです。


ポリタンクを給油台に乗せる時は空だから楽だが、灯油を満タンにしてキャップを閉めて、


斜めに傾けて灯油が漏れないことを確認して、給油台から台車に移すのは大変な作業だ。


おそらく1日に数100缶は灯油を入れているのだろう。


私だったら1日だって続かない。


なにしろ家に帰って、駐車場から玄関まで18L入りのポリタンクを3缶運んだだけで腰が痛くなるのだから。


そうこうしている内に自分の番が来た。


私は思わず「寒い中、大変ですね!」とねぎらいの言葉をかけたつもりが


「寒くないと灯油が売れないからね、そうなると仕事がなくなるから」

と、予想外の返事が返ってきた。


そうだったんだ・・・。


私が思っていた常識と作業員たちの常識がかけ離れていたことを恥じた。


68歳になるが、まだまだ迷い人は世間知らずだった。

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