ためらわない,迷わない

仕事を辞めた。そして自由人になった・・・。

葛飾区補助金誤支給問題について

率直にいうと「やっちまったな!」という印象を受けた。

葛飾区は人口が多いから、ちょっとしたミスでも5億円という大きな数字に膨らんでしまう。


どうしてこんなことになってしまったのか。
あくまで推測の域ではあるが、同業者OBとしての見解を述べさせてもらう。


〔仕事が細分化され過ぎている〕
行政の仕事は各部、各課において仕事が明確に別れている。
これを所掌事務というが、例えば子育て支援課においては「保育園の入退園に関すること」「私立保育園の補助金支給に関すること」というように、課、係(班)、担当者ごとに、それぞれ職務内容が細分化されている。


よって、隣同士の席で仕事をしている仲間でさえ、大体の仕事は分かっているが、具体的な事務手順については「〇〇さんに聞かなければ分からない」なんてことはよくある。


〔異動が早い〕
担当者レベルの異動は平均で3年くらい。5年も1か所にいれば「長老」とか「主」と呼ばれる。
今回は、4年前にエクセルの計算式を変更した際に誤りが発生したらしいが、それを変更した職員は既に他の部署に異動している可能性が高い。


担当者が疑問に思うことがあっても、前任者が異動してしまっては聞くに聞けない。ということは、ままある。


〔バレることはしない〕
日頃お世話になっている私立保育園連盟に気を使ったのか、当初返還を求めないことを検討したらしいが、これは大きな間違いである。
何といっても補助金は公金である。
うわさが拡散したら決算審査特別委員会や常任委員会で指摘を受ける。
バレてから「実は返還請求はしていませんでした」などと答えたら、それこそ大問題に発展する。


区長のブレーンは、運が悪かったと諦め、左遷覚悟で区長を説得するしかない。


辛いだろうが行政に携わっている以上、ミスは早急に公表し、嵐が去るまで、ひたすらお詫びし続けるしか方法はないのだ。

〔補助金は返還するしかない〕
一方、私立保育園連盟会長は「感情的な部分で納得しづらい」などと言っているが、阿武町の4630万円給付金誤送金問題を思い出して欲しい。


今回の私立保育園補助金は、金額も用途も阿武町のそれとは異なるが、納税者から「行政が誤って送金したお金を返さないのか?!」と言われたら、本質的には同様な問題と捉えられても仕方がない。


民間保育園は社会福祉法人や学校法人、株式会社などが運営している。
各組織の理事長さん、私立保育園連盟の会長さんの怒りの気持ちも分かるが、ここで返還を渋ると、それこそ阿武町の田口翔容疑者と同じ立場になってしまう。


〔あと始末〕
そんなこんなで、区長、子育て支援担当部長、担当課長は、9月議会で(今、まさにその時)一般質問の嵐をくぐり、常任委員会で矢のような質問を受け、監査委員からはこっぴどく叱られ、民間保育園の理事長さん一人ひとりに謝って、分割納付という形で数年かけて返還してもらう。
これが落とし処だろう。


実はそれだけではない。
補助金が葛飾区単独のものであれば葛飾区内で解決すればよいのだが、国から1/2、東京都から1/4など財源が拠出されていれば、葛飾区はこれらを返還する必要がある。
このお金は民間保育園からの返還を待っていられないから、区の予備費から支出する。
それにはまたまた議会の承認が必要になる。というオマケ付きだ。


行政マンというのは上に行けば行くほど責任が重くなり、頭を下げて謝り、反省して、事務を改善し、責任を取るのが仕事になる。


これが酷くなると胃を壊したり、精神を病んだり、中途退職したり、不幸にも自殺する職員も出てくる。


これが管理職の仕事なのだから、なんともやるせないというかFIREしたくなる気持ちもよく分かる。

私も現職時代はお詫びするのが仕事だった。


担当課の職員のみなさん
定年退職までいろいろあるが、決して悪い事だけではないので、どうか気を取り直して職務に励んでいただきたい。

×

非ログインユーザーとして返信する