旅で出会った人たち⑤
北海道は白金温泉のホテルに泊まった時のこと
私と妻は朝食バイキングを楽しんでいた。
その席は窓側で景色も良く、解放感があった。
メインの料理を食べ終わったので、最後にデザートを取りに行った。
もちろんテーブルの上に【食事中】と書かれた札を置いたのを確認してのことだ。
私たちは互いにお気に入りのスウィーツとコーヒーを取って席に戻ったところ、なんとそこには見知らぬ人が座っていた。
「失礼ですが、そこは私たちの席なんですが」と言うと、その人は振り返り、指を差した先にはお歳を召した女性が座っていた。
どうやらそのお歳を召した女性が「空いてるからいいわよ!」と言ったそうだ。
法的に解釈すると座っていた人は善意の第三者だから、そのお年を召した女性に向かって言った。
「【食事中】の札が置いてあったのが見えなかったのですか?」
『【食事中】の札はあったけど、部屋に戻ったと思ったのよ!』
???
「【食事中】の札があったのに、なぜ戻ったと思ったんですか?」
と言うと
『だからそう思っちゃったのよ!』と、今度はぶっきらぼうな返事が返ってきた。
私はだんだんと腹が立ってきて、吐き捨てるように
「余計なことを!」と言うと
『そう、余計なことをしちゃったのよ!』
と悪びれる様子もなく居直ってきた。
「このクソ婆ぁ、何んて奴なんだ!」と心の中で叫んだ。
(言っていません!)
そうこうしている内にホテルのスタッフが通りかかったので、私が事情を説明して新しい席を用意してもらった。
そして旅の帰りに・・・
そんなハプニングも忘れて新千歳空港から羽田空港行きの飛行機に乗り込もうとした時、なんとそのクソ婆ぁ(言っていません!)が私たちの席を占拠していた。
読者のみなさんは
「またまたぁ~? 迷い人よ! 話盛り過ぎてないか?」と思うだろう。
しかし、これは残念ながられっきとした事実だ。
私は腹が立ったがここは機内。
ここで大声を出したら飛行機からつまみ出されてしまうから冷静に対処することにした。
「この席は私たちが予約した席です。あなたの席ではありません!」とクールに言い放った。
するとその女性はドギマギしながら私の横をすり抜けようとした。
私はすかさず
「私の後ろのお客さんが見えませんか? みなさん入り口から機内に入ろうとしているんですよ」
「あなたの行こうとしている方向はお客さんの流れに逆行しています」というと、後ろのお客さんもウンウンとうなずいている。
可愛そうだと思ったが、彼女に一分の隙も与えなかった。
私は彼女の旦那さんが前の列にいるのを知っていたので
「今なら向こうの通路が空いてますから、そのまま席を横切って前の列に行ったらどうですか?」と言った。
CAを見るとお客さん同士でトラブルが回避出来たのでホットとしている様子だった。
また、彼女の旦那さんが反論してくるかと思ったが、終始沈黙を守っていた。
いや、彼女の性格を一番よく知っているのは旦那さんだ。
"相変わらずしょうがない奴だなぁ"という表情で舌打ちするのが聞こえた。
しかし、本当に舌打ちしたいのは私の方なのだ!