心に残る映画⑧「恐怖の報酬」
映画「恐怖の報酬」と聞いただけで、あっ懐かしい! と感じる人も多いと思う。
それだけ有名な映画だからか、リメイク版を含めて3作品製作されている。
① 1953年 フランス映画 監督ジョルジュ・クルーゾー モノクロ
② 1977年 アメリカ映画 監督ウィリアム・フリードキン モノクロ
③ 2013年 ②のオリジナル完全版 カラー
1977年のフリードキン版は、1953年のクルーゾー版のリメイク版なのだが、上映時間があまりにも長いということで、フリードキン監督の承諾を得ずに、製作会社が約30分間カットしたもの。
その後、2013年にフリードキン監督自らがオリジナル完全版を手掛けるというやや複雑な事情がある。
私は幼い頃、TVで1953年のクルーゾー版を見て、あまりにも恐ろしくて夜中にトイレに行けなくなったことを覚えている。
1953年って、まだ私は生まれていない。
そんな昔からでも、こんなにも素晴らしく恐ろしい映画があったんだと感銘を受けたので、今回はクルーゾー版を中心にお話をしていきたい。
こちらがタイトル画像
主演はなんとシャンソン歌手のイヴ・モンタン 「枯れ葉よ~♪」
〔ストーリー〕
ベネズエラの場末の街ラス・ピエドラスは貧困、暴力、犯罪が多発する不法地帯だ。
そこには色々な事情があって逃げ延びてきた荒くれ者が住んでいる。
ある日、油田が爆発するという事故が発生する。
火を消すのにはニトログリセリンをトラックに乗せて現地に運ぶ必要があり、会社はそのドライバーを募集する。
500Kmの悪路をトラックでニトログリセリンを運ぶというのは、危険極まりない行為だが、高額な報酬に釣られて4人のドライバーが選ばれる。
その中の2人、マリオ(右)とルイージ(左)。
任天堂は、この映画に敬意を表してスーパーマリオブラザースのキャラクターに、この2人を登場させたと言われている。
そういえばルイージがゲームソフトのキャラと似ている。
1台が爆発しても、どちらかが油田に到達出来るよう、2台のトラックにそれぞれ2人ずつ分乗し、時間をずらして出発する。
途中、急な山道の切り返しで、木製の台の上にトラックを乗せるのだが、マリオの相棒であるジョーはこの台から落ちそうになる。
トラックが台の張線をひっかけ、やがてターンバックルが千切れるのだが、映画を見ている観客はストーリーの中に吸い込まれ、手に汗を握る。
この辺の演出がクルーゾー監督の真骨頂だ。
次にオイルの沼を渡ることになる。
沼の底はどうなっているのか分からないので、ジョーはマリオが運転するトラックの前を歩いて誘導する。
沼の底にあった枯れ枝に足を取られるジョー。
ここでトラックを止めてしまうと二度と発進出来なくなるので、マリオはジョーを轢いてしまう。
沼を渡りきったところでジョーを助け出すマリオ。
自分で轢いておいて「大丈夫か?!」はないと思うのだが・・・。
フリードキン監督版では沼地のシーンは出て来ないのだが、代わりに突然現われた山賊との銃撃戦により、ジョーは瀕死の重傷を負ってしまう。
山賊が現われる前触れも伏線もないのだが、とにかく細かい事は言ってられない映画(笑)。
途中、ルイージ組はニトログリセリンにショックを与えてしまい、トラックもろとも爆死する。
瀕死の重傷のジョーもやがて死んでしまう。
一人になったマリオは、それでも何とか火災現場にたどり着き、多額の報酬を得る。
電話でマリオの成功を知った恋人や街のみんなはお祭り騒ぎ、マリオも有頂天になってジグザグ走行をしながら山道を帰ろうとするが・・・。
〔感想〕
この映画、ひとことで言ってしまえば
「高額の報酬に目が眩んで危険を顧みない男たちの愚行」
なのだが、その金で、貧困で暴力や犯罪が多発する街を出たいという気持ちも分からない訳でもない。
私は、クルーゾー版の思わず映画の中に入り込んでしまうような恐怖の演出が好きだ。
確かにフリードキン版のつり橋を渡るシーンも圧巻なのだが、人間の増悪と恐怖心見事に描いたをクルーゾー版の方が素晴らしい。
フリードキンの完全オリジナル版はTSUTAYAでレンタルできるし、クルーゾー版は調べていないのだが、とりあえずYOUTUBEで見ることも出来る。
こちらはフランス語版で字幕は付いていないのだが、だいたいのストーリーは分かるので見ていて問題はなさそうだ。
長梅雨が続く中、みなさんもこの退廃的でアナーキーな映画を是非ご覧ください。