不審者現る!
『パパ! なんか変な人が来てる!』
1階から妻の悲痛な声が聞こえてきた。
変な人なら出なければいいじゃん! と思いながらも、すぐに1階に降りて行った。
「で、応答しちゃったの?」
『ううん、出てない』
「ならばOK!」
我が家は、基本的に友人知人以外はインターフォンに出ないことにしている。
インターフォンの画像を見てみると・・・

最初は赤いトランクが見えたから郵便屋さんかと思ったが、郵便屋さんはバイクを運転していた。
スマホをこちらに向けて撮影しているのか、それとも顔が分からないようにスマホで隠しているのか・・・。
妻が返事をしなかったのですぐに立ち去ったが、言われてみれば確かにあやしい。
他人のことだと冷静にアドバイス出来るが、いざ自分のことになると迷い人になる私。
そういえば警察官OBの友人がいることを思い出したので相談してみた。
『不審者情報ということで警察に情報提供して、ついでにパトロール要望しておけば?!』
早速、地元警察署に電話したところ、様子を聞きに来てくれることになった。
妻は警察官が来ることで多少動揺していたが、私も元公務員、警察とは一緒に仕事をしたこともあるので、親戚付合いみたいな感覚だ。
「ここのところ不審者が多いので、何時ごろ何という名前の方が来ますか」
『10分から15分後くらいにMという者が行きます』
しばらくして・・・。
15分後にバイクに乗った警察官が2人現れた。
名前を聞くとMさんではない。
「Mさんという方が来るという話になってるんですけど」
『Mは私たちの同僚ですが・・・・・・・・・』
どうやらこの二人は事情を聞かされていた訳ではなく、ただ「行ってこい!」と言われて来たんだと思った。
事情が分かっていれば『Mは急用が入ってしまって、私たちが代理で来ました』
と言うはずである。
門を開けようか迷っていたのだが、バイクの後部座席に付いている白いトランクを開け、ヘルメットを脱ぎ、帽子を被り直し、回覧板のような記録用のボードを持ち出したので、本物の警察官だろうと思って門を開けた。
『えっ、中に入っていいんですか?』
「不審者の画像を見に来たんだろ?」
『立派なお庭ですね!』
「親が農家だからね」
口には出さなかったけど、"そんなことはどうでもいいだろう、何しに来たんだ"と思った。
『お邪魔します!』
割と礼儀正しい若者だった。
名前を聞くときも
「お名前は何といいますか?」ではなくて
『お名前を伺ってよろしいですか?』という。
とりあえずインターフォンの画面をスマホで撮っている。
先輩と思われる女性警察官は、インターホンの設定時刻と現在の時刻を比べて実際の時間を割り出している。
流石だ! それは気が付かなかった。
私たちの住所、名前、生年月日、電話番号を聞いて、例の回覧板らしき物に書いているが、立っているから書き辛そうだった。
見かねて「どうぞ、お座りください」とリビングの椅子に促した。
肩に付けた警察無線のマイクも鳴っているし、この頃になってようやく私も警察官だと信用し始めた。
落ち着いてみると、二人はとても若い、少なくとも私たちの子どもより若い。
警察官のマニュアルどおり”キチッ”としている。
そうなると、彼らの素の姿を見たくなるのが私の悪い癖だ。
男の子に
「左利きなんだ!」いうと、恥ずかしそうにニコッと笑う姿を私は見逃さなかった。
なんだかんだ聞き取りが終わって、防犯の指導があるのかと思ったが、何もない・・・。
仕方がないので、こちらから
「この地域で強盗とか、凶悪犯罪ってありますか?」と聞いても
『特に・・・』
我が家の防犯体制を見てもらっても何も意見しない。
音の出る砂利の上で
「4人(私、妻、警察官2人)で歩くと、意外と大きい音がするんだ」と言うと
女の子の方が
『私もそう思った!』と返事をした。
口には出さなかったけど"感心してる場合じゃないだろ、君たちは指導する立場じゃないか"と思った。
結論として『この周辺のパトロールを強化します!』と言ってくれたことは収穫だった。
帰りにバイクの方向転換をしていた時
思わず「バイクは危険だから、気をつけて帰ってね!」と言ってしまった。
それはまるで子供たちを送り出す親のようだった。
今は何とも頼りない警察官だったけど、その内キャリアを積んで立派な警察官になって、県民の生命と財産を守ってくれ。

がんばれよ! (柳沢慎吾風に)