一日遅れのバレンタインデー (ベルクール再訪)
仕事を辞めて家にいるとバレンタインデーにチョコレートをいただける貴重な人は妻だけになった。
最近、それも儀礼的かつ慣例的になってきたし、この歳になっても菓子メーカーに躍らせられるというのもどうかと思い、ひとつのアイディアを思いついた。
それは、バレンタインデーには妻の奢りで食事に行き、ホワイトデーには私の奢りで食事に行こうというものだった。
妻はこの提案を快諾した。
また、妻は最近職場からコロナ関連の給付金が出たということで裕福だ。
よって、バレンタインデーはフランス料理店にして、ホワイトデーはカレーハウスにすることにした。
(おぬしも悪よのう)
妻の仕事の都合で一日遅れのバレンタインデーと称して大雨の中、市原のベルクールに車を走らせた。
店の中はこんな感じ。
中央にアップライトピアノが置かれ、仕切りの役割をしている。
お客は私たちを含めて4組がフロアの四隅に座っている。
適度なソーシャルディスタンス。
まずは前菜から。
コロナの関係で前菜は決められていた。
サラダには程よい酸味のドレッシングが掛けられていて食欲をそそる。
生ハムもテリーヌもなかなか上質なものだ。
フランスパンも暖かくて美味しい。
スープはこれ。
外が寒かったので、オニオングラタンスープを頼んだ。
パンにオニオンスープが染み込んでいて美味しい。
とろけるチーズも身体を暖めてくれる。
魚料理はすずきのポアレ。
魚の皮をバーナーで炙ってあるため、テーブルに近づいてくるだけで香ばしい匂いが広がる。
すずきの周囲を玉ねぎとナスを刻んでトマトであえた野菜が囲む。
黄色いソースがまた絶品だったので、パンですくって残さず食べた。
メインは鶏肉のポアレ。
こちらも新鮮な野菜と美味しいソースが鶏肉を引き立てていた。
食後のデザートはアイスクリームとコーヒー。
アイスクリームには隠し味の蜂蜜とミントの葉がアクセントになっている。
ちなみにアイスクリームに付いている筋は、私が写真を撮るのを忘れて食べそうになってスプーンで付けたものなので本来は付いていない(笑)。
相変わらず接客はていねいで洗練されている。
一品一品のサーブのリズムも完璧だ。
1時間30分くらいだろうか、私たちは一日遅れのバレンタインデーのランチを楽しんだ。
帰りに厨房の奥からわざわざシェフが姿を現した。
「予約で何度か電話したんだけど、なかなか繋がらなくて(コロナで)どうかしちゃったのかと心配しましたよ」
『すみません。ここのところ大変で、お客さんがいない日は閉めたりしていました』
「そうなんだ、いつまでも続けてくださいね!」
『それはもう、もちろんです!』
シェフの笑顔の見送りを受けて家路につくことにした。
帰りに店の前で撮ったショット。
写真では判りづらいが、土砂降りの中でずぶ濡れになって撮った1枚。