DIE WITH ZERO ~0円で死ね!~
図書館で面白い本を見つけたので、ご紹介したい。
「DIE WITH ZERO」
ビル・パーキンス著 児島修 訳
ダイヤモンド社 発行
直訳すると「たくさん貯金を残して死ぬのではなく、お金は全部使ってから死のう!」 という意味だ。
私も賛成だ! 出来ればそうありたいと願っている。
この本は冒頭で、アリとキリギリスの寓話が登場する。
「アリは夏の間に一生懸命働いて食物をたくさん貯えて冬を迎えたが、キリギリスは夏に遊び過ぎて貯えがなく、冬になったら死んでしまった。」
という話だ。
しかし、著者のビル・パーキンス氏は
ずっと働くだけの人生を送ってきたアリは、はたして幸せな人生だったのか?
という問題提起をしている。
お金は労働の対価として得たものだから、それを使わなかったら、その労働は人生の中で無駄な時間になってしまう。
お金をずっと貯め込んで死んだとしたら、国に相続税を取られ、子どもに渡す分は減ってしまう。
子どもだって、親が死んでからお金を貰うよりも、若い時に貰った方がより有効に使えるはずだ。
ん~、言われてみれば確かにそのとおりだ!
私も親が他界した時に、僅かではあるが相続財産を受け継いだが、私が住宅ローンに追われ、加えて子どもの大学費用が重なった時は、正直生活が苦しかった。
そんな時にお金を援助してもらえたら、その方がいっそう嬉しかったはずだ。
小さな話だが
もし、学生時代にお金があったら、バイクを買って北海道を一周する旅を実現する夢が果たせた。
もちろん今、北海道を旅することは大した事ではないが、若い頃の方が旅の感動は大きかったと思う。
つまり、お金の浪費は良くないが、お金は使いたいと思った時に使った方が、より有効に活かせるということだ。
ただし、多くの日本人は、「年金+2000万円問題」で大騒ぎしている現状からして、著者のビル・パーキンス氏のレベルまでは達していない。
私のように、老後の生活費は足りるのかエクセルの表を駆使して一喜一憂している者にとっては、「DIE WITH ZERO」で語られている内容は、レベルが高過ぎて夢物語のように聞こえてしまう。
イソップ物語のアリの人生にしても、キリギリスが死んだ後、アリたちはその死骸をスープに入れて
「ほら見ろ! 馬鹿なキリギリスは、俺たちのディナーになったぞ!」
と、大宴会を楽しんでいたのかも知れない。
とはいえ、多少違和感を覚えたとしても、著者の考えを全否定するのはあまりにも稚拙だ。
良いと思える部分、共感できる部分は知識として吸収し、否定的な部分はスルーしてしまうのが堅実な人間の思考だ。
ビル・パーキンス氏の考え方で最も共感できたのは
「後悔しないで死ぬためには思い出作りが最も重要なことだ。
立派な家や高価な車を持っていても、それはあの世に持っていけない。
あの世に持って行ける唯一のものは思い出だけだ」
ということだ。
自分が死んだらあの世に思い出を持って行けるかどうかは定かではないが、少なくともこの世に残された配偶者や子どもの心の中には思い出は残るはずだ。
だから、妻は迷惑だと思っているかも知れないが、老後は妻と一緒に日本全国、いや世界中を旅して「思い出作り」をしていこうと思うのだ。