『年金』あなたは繰り上げ派? それとも繰り下げ派?
60歳の誕生日の3か月くらい前になると年金機構からみどり色の封筒が届く。その中に年金受給申請書が入っているのだが、家族構成、勤務状況、年金受給口座、その他必要書類のコピーなど、やたら手続きが複雑だ。
私は年金がいつ頃からいくら位支払われるのか知りたかったので、年金機構に電話でアポを取り、直接個別相談を受けることにした。
窓口で私の申請書の記載のチェックをし、支給額のシミュレーションをしてもらった後、担当者はこういうことを言った。
「70歳まで受給を繰り下げると42%お得になりますよ!」と。
私はあまり考えないまま
「そんなに長生きしないと思うので65歳からでいいですよ!」
と答えてその場をやり過ごした。
家に帰ってきてからその担当者の話が気になったので、インターネットを使って少し調べてみた。
本来65歳から支給される年金を、それ以前に受給することを「繰り上げ」といい、それ以降に受給することを「繰り下げ」という。
繰り上げの場合は月に0.5%減額されるので、60歳から受給すると
0. 5%×12月×5年=30%減額される。
一方、繰り下げの場合は月に0.7%増額されるので、70歳から受給すると
0. 7%×12月×5年=42%の増額となる。
そしてそれは一度選択したら後から変更はできない。
それではどの選択肢が本当にお得なのか調べていたら、分りやすいグラフがあったので紹介する。
それによると年金の総支給額は
①60歳から繰り上げ受給すると65歳から受給した場合と比べ、76歳8か月で抜かれ、それ以降損をする。
②70歳から繰り下げ受給すると65歳から受給した場合と比べ、81歳10か月以降得をする。
ということが分かった。
とどのつまりは「自分が何歳まで生きるのか」それが分からない以上、どちらが得か分からないということだ。
それでは身も蓋もないので、私なりの見解を述べさせていただく。
「60歳から受給した方がお得な方」 (繰り上げ受給)
① 比較的短命な家系に生まれた方
② 重度の疾患を有している方
③ 明日の生活にも困窮している方
「70歳から受給した方がお得な方」 (繰り下げ受給)
① 比較的長生きな家系に生まれた方。
② 健康に自信のある方
③ 60歳から70歳までの間、無年金で生活していける方
④ 総支給額の損得にこだわりのない方
と思う。
「身体が元気(健康寿命)な内に充実した生活を送りたい」という人は減額されても60歳から受給すればいいし
「当面の生活資金はあるから、晩年安心して暮らして行きたい」という人は70歳から受給すればいいことになる。
要するに考え方の問題だと気づいた。
かくいう私は、そんなことは全く考えずに65歳から受給を選択した訳だが、結果、それで良かったと思っている。
なぜなら自分の死期が迫っている病床で
「ああ、得して良かった~」とか
「くそ~、あと数か月長生きしていたら得していたのに」
などと考える余裕は到底ないだろう。
むしろ「頼むから安らかに逝かせてくれ」と思うと思うのである。