相続ドタバタ物語⑨ 最終章
よく聞く話だが、数千万円以上の相続はそれ程揉めないが、数百万円程度の相続になると、
とたんに骨肉の争いになるという。
残された人たちが揉めないためにも遺言書は書いておいた方が良い。
いや、絶対といっていい程書いておくべきだ。
もちろん私も今回実際に相続を経験して、遺言書を書いておいた。
相続で最優先される事項は遺言書である。
稀に遺留分で争いになるケースもあるが、日本の法律では被相続人の意志が第一に尊重される。
次は民法上の分割割合。
遺言書が発見されない場合はこの方法になる。
他にも相続人同士の話し合いで遺産分割協議をする方法もあるが、ほとんどの場合は大揉めに揉めた後、裁判に発展するケースも少なくない。
私は、「遺言書」か「民法」あたりで止めておく方が賢明だと思う。
日本は法治国家だから、法律に則った解決方法を進めて、どの相続人からも「しかたがないよね」と納得してもらう方向に仕向ける。
その方が兄弟たちも後腐れがないし、親類や周辺にも説明がしやすい。
金融資産の分割は簡単だが、不動産の場合はそうはいかない。
上手く売却できれば換金して分割してしまえばいいのだが、売れない場合は誰が引き取るのかで揉める可能性が大きい。
不動産業者に頼んで不動産鑑定をして資産価値を決め、金融資産と合算して遺産分割も出来なくはないが、そこまでする家もあまりないと思う。
さて、我が家の相続の場合は、幸いなことに金額的には揉めなかった。
実は、兄が相続した不動産Aの方が、私が相続した不動産Bよりも遥かに資産価値が高かったのだが、兄は長男だし、これから墓を管理していくことになるので、私は何も言わなかった。
親しい仲間からは
「いったい、いくら相続したの?」とか
「高級外車とか買わないの?」とか
「家を新築する予定は?」などと聞かれるが
残念ながらみんなが期待するような事はなかった。
何に使ったかというと、定年退職してから年金が支給される65歳になるまでの5年間の生活費(食費+光熱水費+公租公課)だった。
私は母親から財産をもらったというよりも、定年退職してから年金を受給するまでの5年間に考える時間をもらったと思っている。
つまり、母親から
「この5年間に自分の人生の生き方、身の振り方をよく考えなさい!」
と言われたような気がしてならない。
そして私は熟慮の結果、自由人を選んだ。
これで私の相続体験記は終りです。
私の拙い文章を最後まで読んでいただきまして誠にありがとうございました。
迷い人