相続ドタバタ物語⑦ 不動産は負動産?! その①
私は今の時代、居住用財産(現に自分が住んでいる家屋敷)以外に不動産を持たない方がよいと思っている。
少子高齢化社会の進行により不動産に対するニーズが減少しているし、そもそも経済が悪化して若者の購買力も減衰している。
ましてや若者のターゲットとなる不動産は、駅まで徒歩5分以内の通勤圏内にあるマンションであって、間違っても郊外の戸建て一軒家ではない。
よって、私が相続で得た不動産Bは即刻売却することにした。
中には「家をリフォームして、老後の家賃収入にしたらどうか?!」という話もあったが、私はそのような才覚もないし、そもそもそのようなリスクを負いたくない。
昭和の土地神話がまかり通る時代ならまだしも、令和となっては『売れる内に売っておく』のが賢明だと思った。
不動産は車と違って、手放したくなっても下取りも廃車も出来ない。
買い手が現れない限り永久に持ち続けることになる。
その間、毎年固定資産税を払い続け、定期的に雨戸をあけて掃除をし、草取りをして、ご近所にあいさつに行かなければならない。
また、家にスプレーで落書きをされるかも知れないし、訳の分からない人が住みついたり、放火される心配もある。
そんなことを考えていたら『とっとと売り払って肩の荷を下ろしたい』というのが本音だった。
そんな訳で、現役時代に信頼を寄せていた不動産会社のH氏に連絡を取って不動産Bの売却作戦を実施した。
H氏は人事異動により支店を変わっていたが、ビジネスパートナーとして信頼していたし、相性も良かったのでH氏を探して支店を追いかけた。
H氏は私が探し求めていたことを聞いて喜んでくれた。
その後
私はH氏と不動産の現地を訪れた。
そこには築40年の老朽化した建物が立っていた。
すると突然、庭から知らないおばさんが出てきた。
その手には野草を摘んだカゴがあった。
そのおばさんは「こんにちは!」でもなく「失礼しました!」でもなく、私たちを無視するように足早に去っていった。
(他人の土地に勝手に入るのは犯罪なんだぞ。このクソババァが!)
気を取り直してH氏と打ち合わせをする。
「こんなボロ屋だけど大丈夫なの?」
『正直いって家は見ていません。家付きの土地として売り出します!』
『更地にしてしまうと固定資産税が跳ね上がりますから、家の解体費用を売買価格から値引きすればいいんです』
なるほど!
不動産屋って、こういう視点で物件を見ているんだと感心した。
H氏は現地に来る前に、周辺の不動産の流通動向や価格を調査してあった。
私の相続した不動産Bのスペックは
土地面積は27坪 。
南側に8m道路、東側に6道路(共に市道)と接道。
不動産物件から最寄り駅まで徒歩3分。
最寄駅から東京駅まで電車で40分。
まるで猫の額もいいとこだ。
「売れますかね?」
『商品価値はあります。売ります!』
H氏の自信に満ちた言葉に勇気づけられ、ここは彼に任せることにした。
続く!