ためらわない,迷わない

仕事を辞めた。そして自由人になった・・・。

台風の爪痕 その②

私の家は千葉県の鋸南町や茂原市、市原市のような甚大な被害はなかったが、自宅の前の市道が冠水した。
その時の模様について書き残しておきたい。


今年の台風15号は、雨風とも激しく、私が経験した台風の中では最強だった。一枚ではあったが二階の瓦が落ち、庭のザクロの木が倒れた。
台風19号は、天気図上では15号より広大であったため、それなりに準備をしていたのだが、予想する程の大きな被害ではなかった。
そして台風21号が来た。本県の東側を通過する予報だったので、あまり気にしていなかったが、かつて経験しなかった大雨を降らせた。


U字溝を挟んで左が駐車場で右が市道だ。

U字溝と駐車場入り口に段差はなく、駐車場の奥で約20cmほどの勾配になっている。


これが駐車場の奥のブロック塀。約10cmの高さで色が変わっているから、市道から約30cmの高さまで水が上がったことになる。


敷地は土盛りしてあり、駐車場の奥から約52cm高くなっている。


よって、市道からの水位が20+52=72cmを越えると庭が冠水し始めるという理屈だ。


今から40年前、私が社会人に成りたてだった頃の話。
先輩が「10分間に10mmなんて雨はまず降らないよ。降っても半世紀に一度かな」と言っていた。
しかし、あれから40年が経ち、地球の温暖化が盛んに叫ばれるようになったら、半世紀に一度と言われた大雨が、年に数回も訪れるようになった。
それどころか、今回の台風は1時間に100mmもの大雨を降らせた。


時間100mmの雨とはどんなものか。
あたり一面バケツをひっくり返したようで視界が効かず、周囲はまるで霧のカーテンに包まれたような感じだ。
二階のベランダから外の様子を見ていると、救急車のサイレンの音が引切り無しに聞こえ、冠水を避けるように高台を探して車が走り抜けていく。防災無線は雨の音にかき消され、市道は川のようになり、側溝は水没し、市道と駐車場の区別がつかなくなった。


水位はタイヤの下部のゴムの部分に達し、車が通るとその横波がタイヤの軸の位置まで来ていた。
私も車を高台に移動させようかと思ったが思い止まった。
なぜならば・・・
〇高台といっても道路や他人の家の前に停める訳にはいかない。せいぜい公共施設の駐車場に停めることになるが、そこはおそらく避難所になっていて混雑しているだろう。
〇高台に着く前に途中道路が冠水していて、車が動かなくなるかもしれない。
〇高台に着いたところで、帰りは徒歩で帰って来なければならない。下手をすれば流されて命を落とすかも知れない。
〇そもそも私の車は古くて残存価値がほとんど無い。少なくとも命を懸ける程の物ではない。
と考えたからだ。


ついに冠水が始まった。


タイヤの下のゴムの部分まで隠れたから道路から30cm冠水していることになる。


おかしい。
水は高い所から低い所に流れるはずだ。
私が住んでいる所は高台だし、ハザードマップを見ても危険区域ではない。それなのになぜ冠水するのだろう。
少々ボケ気味の頭をフル回転させて考えてみたら、少しだけ分かってきた。
1 水は高い所から低い所に流れるけれど、その傾斜は図面で書くような一直線ではない。凸もあれば凹もある。凹に溜った水が凸を越えなければ水は低い所に流れない。
2 降水量が排水能力を超えていて、排水が追いつかない。
3 U字溝にゴミ等が溜っていて、水が上手く流れていかない。
よって、ある程度の水位になれば水は流れだすだろうという予測を立て、家の中に留まることにした。
その「ある程度の水位」というのが分からないから不安なのだ。


一面に霧がかかったような大雨の勢いが少しだけ弱まると、水は嘘のように引けて、まるで何事もなかったように道路と駐車場の境のU字溝が現れた。
結果、自動車を移動させなくて正解だった。


今回の大雨で分ったことは、避難所に避難するのなら相当早い段階でなければ間に合わないということだ。貴重品や最低限度の荷物を持って、子供やお年寄りの手を引いて暴風雨の中を歩くのは無理だ。それならば、二階に避難したり屋根の上に上るハシゴを用意した方がまだましだ。いわゆる垂直避難だ。


私は今回の台風を機会にフード付きの作業用雨具と底の深い長靴を買った。今後は二階のベランダから屋根に上がれる脚立も買おうと思う。救助を求める白旗は古いシーツとモップの柄を流用すればいい。非常食や災害用品やキャンプ用グッズはアウトドア用のリックに入れて背中に背負えるようにしよう。


のど元過ぎて、災いを忘れないうちに!

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